建物内でのLoRaの通信距離を調べました。
・住宅地での通信距離と信号強度の調査は「LoRaの通信距離と信号強度」をご覧ください。
・測定システムは「Raspberry Pi3とArduinoのLoRa通信」をご覧ください。
調査結果サマリー
- 6階建てビル(柏の葉キャンパス駅前のKOIL)の6階中央にゲートウェイに相当する固定端末を設置。ワイヤーアンテナの端末でビル全体で信号測定したところ、1階から6階までどこでもLoRaの信号を検出できた。
- 今回の測定では4階で1ヶ所、帯域幅125kHz、拡散率8で信号が検出できなかったが、それを除くと全ての場所で、全ての帯域幅、拡散率の組み合わせで信号が検出できた。固定端末からの距離により信号強度に差は出るが、帯域幅、拡散率による差はあまりない。
測定システムと測定方法
住宅地での測定と同様に、EASEL社製LoRa通信モジュール「ES920LR」を2個、対向で使い、固定端末と移動端末にしています。
建物内での利用シーンを考え、ゲートウェイに相当する固定端末はダイポールアンテナを使い、センサー端末に相当する移動端末はワイヤーアンテナを使いました。また、住宅地での測定では測定地点の緯度経度をGPSで計測しましたが、建物内ではGPSを使わず、測定した時刻と建物内の場所をノートに記録しました。
住宅地での測定と同様に、建物内を移動し、測定場所で帯域幅を62.5kHz、125kHz、250kHz、500kHzの4通り、拡散率を7から12の6通り、計24通りに変えながら通信して、信号強度を調べ、結果をAmbientに記録しました。
測定場所
柏の葉キャンパス駅前の「31VENTURES KOIL」で測定しました。KOILは長辺約50m、短辺約37m、6階建てのビルで1〜3階が商業施設、4階がオフィス、5、6階がコワーキングスペースなどを含むインキュベーションオフィスです。
6階のほぼ中央に固定端末を置き、移動端末を持ってビル内各所でLoRaの信号を測定しました。
測定結果
帯域幅と拡散率を変えて測定した信号強度を、次のような色で表現しています。
6階のフロアレイアウトと測定結果を示します。
6階ほぼ中央に設置した固定端末を★で示しています。
固定端末の周辺はもちろん、ガラスの壁に仕切られたオフィススペースでも強い信号が検出できました。図の右上は洗面所、左上は防火扉の先の自販機などが置かれた場所ですが、どちらも十分な信号強度が得られています。
次に5階から1階までの測定結果を示します。
固定端末からの距離が遠くなるに従って信号強度は下がる傾向ですが、どの帯域幅、拡散率でも信号が検出できていることが確認できます。
1階ではビルの外でも測定しました。窓を通して電波が届くのか、ビル内よりも強い強度で信号が検出できました。
まとめ
6階建てのビルの6階にゲートウェイに相当する固定端末を設置すると、ビル全体をカバーするLoRaネットワークが構成できることが確認できました。もちろん測定結果は壁や床などの構造の影響を受けますが、一つの事例を加える事ができたと思います。
・住宅地での通信距離と信号強度の調査は「LoRaの通信距離と信号強度」をご覧ください。
・測定システムは「Raspberry Pi3とArduinoのLoRa通信」をご覧ください。
測定にご協力いただいたドローンワークス株式会社の今村社長に感謝します。